ミステリー小説

『護られなかった者たちへ』(中山七里)感想・書評・レビュー【評価:★★★★☆】

■目次

・内容

・感想、書評、レビュー

・著者略歴

1:内容

仙台市の福祉保健事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。

三雲は公私ともに人格者として知られ怨恨が理由とは考えにくい。

一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。

三雲の死体発見から遡ること数日、一人の模範囚が出所していた。

男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。

男の目的は何か?なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか?罪と罰、正義が交錯した先に導き出されるのは、切なすぎる真実―。

※「BOOK」データベースより

2:感想、書評、レビュー

評価:★★★★☆

中山七里の小説は本書で5作目。

本書のテーマは「生活保護」。

「ネメシスの使者」も「ドクターデスの遺産」も社会問題を「死」で表現している。

本書もその一つである。

ある日、仙台市の福祉保健事務所課長の三雲が遺体で発見される。

自殺でも事故でもなく、他殺であることがわかった。死因は「餓死」。

殺された三雲は殺されるような人ではなかった。

人から恨みを買うような人ではなく、動機の線での捜査は難航を極めた。

ある手がかりがきっかけで事件の捜査は進展する…。

事件に見え隠れする「生活保護の性善説と性悪説」。

生活保護なしでは生きることができないにも関わらず受給認可がおりない人たちもいれば、逆に生活保護がなしでも生きていけるのに不正受給をしている人たちもいる。

本書は実際に社会で起きている「生活保護の闇」にスポットライトを当てているように思える。

そして「この闇」こそ本書の本当のテーマなのである。

本書を読んでみて、以前読んだ柚月裕子著の「パレートの誤算」を思い出した。

「パレートの誤算」のテーマも「生活保護」だが、本書とはアプローチの仕方が違う。

読み比べてもおもしろいとおもう。

クライマックスには「どんでん返し」もある社会派ミステリー。

3:著者略歴

中山七里
1961年生まれ、岐阜県出身。

2009年『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい! 」大賞を受賞。

斬新な視点と華麗などんでん返しで多くの読者を獲得している。

他に『総理にされた男』『贖罪の奏鳴曲』『テミスの剣』『ヒポクラテスの誓い』
『ネメシスの使者』『ワルツを踊ろう』『逃亡刑事』など著書多数。

※「BOOK著者紹介情報」