恋愛小説

『手のひらの砂漠』(唯川恵)感想・書評・レビュー【評価:★★★★★】

■目次

・内容

・感想、書評、レビュー

・著者略歴

1:内容

この不幸は、いつまで続くのだろうか―。

平凡な結婚生活の先に待っていたのは、思いもよらぬ夫からの暴力だった。

シェルターからステップハウス、DVの被害女性だけで運営される自然農園…。

離婚を経て、居場所を変えながら少しずつ自立を果たそうとあがく可穂子に、元夫・雄二の執拗な追跡の手が迫ってくる…。

現代の闇に恋愛小説の女王が切り込む、衝撃のノンストップサスペンス!

※「BOOK」データベースより

2:感想、書評、レビュー

評価:★★★★★

これはおもしろい!久々の唯川作品だったけど、やっぱりハズレなし!

物語のテーマは「DV(ドメスティックバイオレンス)」。

夫のDVを受けているカホコが、苦悩と恐怖にもがきながら、様々な人との出会いを通して、強く、成長していく物語。

今朝の朝刊に(2021年1月13日)、DV件数が年々増えているという記事が出ていた。

2020年4月~2020年11月末で、約13万人。

平成22年の時は約8万人だったようだから、10年で約2倍に膨れ上がっている。

DVの家庭内においては児童虐待の率も高いらしい。

本書では描かれていなかったが、子供を虐待するなんて許せない。

自分より力の弱いものに対して暴力をふるうこと自体許せない行為。

物語序盤に夫のユウジに暴力をふるわれるシーンでは胸が痛んだ。

先日、僕の嫁との会話で「好きな作家」という議題になり、東野圭吾、柚月裕子、唯川恵・・・と答えていたところ、「唯川恵」がかなり意外だったらしい。

唯川恵は女性好み?の印象が強いらしく、ぼくみたいなおっさんが好んで読んでいるのが不思議らしいw

確かに唯川恵作品はミステリーのようなどんでん返しやトリックはない。

ただ、どの作品も感情移入でき、物語の世界(唯川ワールド)に引き込まれる。

本書のタイトルを自分なりに考えてみた。

カホコにとっては右を見ても、左を見ても、同じ(乾ききった砂漠のような)景色。勇気をもって、諦めることなく歩き続ければ希望がある。

過去を握りしめて強く生きていくという”人間の強さ”を描いた作品。

3:著者略歴

唯川恵
1955年金沢市生まれ。

金沢短期大学卒業。

銀行勤務を経て84年「海色の午後」で第3回コバルト・ノベル大賞受賞。以後、恋愛小説やエッセイを発表し、2002年『肩ごしの恋人』で第126回直木賞受賞。

08年『愛に似たもの』で第21回柴田錬三郎賞受賞

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

※「BOOK著者紹介情報」