
■目次
・内容
・感想、書評、レビュー
・著者略歴
1:内容
所轄署から田舎の駐在所に異動となった日岡秀一は、穏やかな毎日に虚しさを感じていた。
そんななか、懇意のヤクザから建設会社の社長だと紹介された男が、敵対する組長を暗殺して指名手配中の国光寛郎だと確信する。
彼の身柄を拘束すれば、刑事として現場に戻れるかもしれない。
日岡が目論むなか、国光は自分が手配犯であることを認め「もう少し時間がほしい」と直訴した。
男気あふれる国光と接するにつれて、日岡のなかに思いもよらない考えが浮かんでいく…。
警察VSヤクザの意地と誇りを賭けた、狂熱の物語。
日本推理作家協会賞『孤狼の血』シリーズ最新刊!
※「BOOK」データベースより
2:感想、書評、レビュー
評価:★★★★☆
本書は、「孤狼の血」の続編。
「孤狼の血」が大好きすぎて、速く本書を読みたかったのだが、ようやく読めた。
物語は、前作が「ヤクザ抗争を止めるべく奮闘するマル暴の物語」だったのに対し、今作は「ゴリゴリのヤクザ抗争の物語」。
率直な感想は「孤狼の血」程の興奮は得られなかったかな。
ただ、次作(暴虎の牙)ありきの前哨戦としては申し分ない。
むしろ次作を引き立てるんじゃないかな。
というのも、本書の終わり方が次作へのワクワクの余韻を残す形で終わっていたからだ。
ちなみに「孤狼の血」を読んでない人が今作から読んでしまうと、理解するのが大変だと思うのでまだ前作を読んでない方は前作から読むようことをおすすめする。
今作の最大の読みどころは、主人公の日岡の倫理観(正義感)の”変化”だ。
これはあくまで主観だが、前作の終盤の日岡は「ヤクザは必要悪」だという大上の倫理観に100%肯定はしていなかった。(5:5くらいの肯定感)
だが今作では、その割合が変化した。
正直、日岡のその変化には寂しくなってしまった。
ただ、「日岡はどこで変化したか」という視点で再度読んでみたところ、”変化”ではなく”進化”なのではないか?
と思ってきた。
時代の流れとともに暴対法が改正され、ヤクザのシノギに対する規制が厳しくなった。
その副産物としてヤクザの中での「ハミダシもの」が出てきた。
マル暴とヤクザの癒着(持ちつ持たれつの関係)に対する取締も厳しくなり、大上の口癖でもある「カタギの安全」を守るには、”進化”が必要だったのかもしれない。
日岡は大上の後継者に”なるべくしてなった”のだ。
(以上、個人的解釈)
長くなってしまったけど、迫力満点のバイオレンス・サスペンスでおすすめ!
3:著者略歴
柚月裕子
1968年、岩手県出身。
2008年『臨床真理』で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。
13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞を、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※「BOOK著者紹介情報」