
■目次
・内容
・感想、書評、レビュー
・著者略歴
1:内容
ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。
そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。
リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに篭めた想いとは―。山本周五郎賞受賞作。
※「BOOK」データベースより
2:感想、書評、レビュー
評価:★★★★★
これはおもしろい!おすすめ!本書は本格芸術ミステリー。
最近は東野圭吾や柚月裕子のミステリー小説ばかり読んでいた。
彼らの小説の特徴は「殺人事件」を軸に物語を展開させていくところ。
それに対し原田マハは「誰も死ぬことなく」ミステリーを描いていくイメージ。
原田マハ氏の作品は過去に「キネマの神様」「総理の夫」の2作を読んだ。今回は現時点では3作目。
どれも読み終えたあとに心地の良い後味を残してくれる。
その後味がすごく好き。物語の主人公は早川織絵。
アメリカで生まれ育った織絵は幼い頃から美術、絵画に興味を持ち、中でもルソーの研究においていくつもの論文を書き、世界的にも若き天才として名を轟かせていた。
ある日、世界的コレクターのバイラー氏から招待を受け、”ある依頼”を受けることになる。
“ある依頼”とはバイラー氏が所有するルソー著の”夢”の真贋判定だった。
そこから物語は展開していくんだけど、本書の何がそんなにおもしろかったかというと「名だたる芸術家や作品が登場し、当時の時代背景、画家たちの様子、あの名画がどのように生まれたか、その情景や世界観が素敵すぎるところ」。
まるで美術館を歩いているような感覚になれる。
そして、”存在するはずのない”「もうひとつの”夢”」がなぜバイラー氏が所有しているのか?
という”ナゾへの期待”がどんどん高まっていく高揚感がたまらない。
そのナゾが解けた「高揚感」が「満足感」にかわり、「満足感」が「心地の良い後味」にかわる。
1つの物語でこのような感情の変化が得られるのはすごいこと。あたたかいカフェラテを飲みながらもう一度流し読みしたくなっちゃう。
3:著者略歴
原田マハ
1962(昭和37)年、東京都小平市生れ。
関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史科卒業。
マリムラ美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍時、ニューヨーク近代美術館に派遣され同館にて勤務。
その後フリーのキュレーター、カルチャーライターに。
2005(平成17)年「カフーを待ちわびて」で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、デビュー。
『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞受賞
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※「BOOK著者紹介情報」